コラム

父親と息子がライバル関係
互いに切磋琢磨しあう

  北陸越地区フルート科  摺出寺 敬子先生クラス
中島 奏さん・葵さん(父)

 

レッスンは夜8時から始まります

 中島 奏さんは、今8歳(取材時)で小学2年生です。フルートを始めたのは、3歳の春から。高岡市のかたかご幼稚園に、スズキ・メソードのヴァイオリンとフルートの教室があり、摺出寺先生と出会いました。

 
 「当初は母親にまかせっきりでしたが、二人目を妊娠した時に調子が悪く、2年ほど前にしばらくの間、代わりに教室に行ったのが最初でした。回復してからは、母親が行っていましたが、二人目が昨年2月に産まれる時にまた代わり、その後はずっと付き添っています」と語るのは、父親の葵さん。お仕事の都合もあり、レッスンは毎回夜8時からのスタートです。
 
 取材に訪れた日は、東京が雪で混乱したものの、北陸は雪のない状態(もっとも、この夜から猛吹雪になりました)。
  
 この日、学校で縄跳びの前跳びを200回、二重跳びを35回連続で跳ぶなど、元気もりもりで教室にやってきた奏さん。見事にメンデルスゾーンの「歌の翼に」を披露し、摺出寺先生やお父さんをびっくりさせました。確かに歌心満載で、音もよく伸びていました。「昨年の卒業録音で具合の悪かったところが全部クリアできていたし、トリルのところもちょうどよかった。今まで聴いたことがない演奏」とお父さんは目を丸くされていました。摺出寺先生も「録音の時よりも良かったね」と絶賛。奏さんによれば、「毎日1回、この曲を吹いていた」ことが、効果てきめんだったようです。
 

葵さんはピアノ譜を見ながら、レッスンを把握

ご家庭でのレッスン風景

 「練習は普段は週2回ぐらいで、1回に30分くらい。他の習い事もあるので、あまり強制しないようにしています。練習は、たいてい私の帰宅前に終わっていますから、ほとんど見られませんが、発表会の前などは楽譜を見ながら聴き、先生に教わったことで、できていないことなどを、嫌がられますが指摘しています。以前は大したことは言えませんでしたが、今は一緒にレッスンを受けている状態なので、自分は演奏できなくても、先生の教えを理解して、子どもに伝えるようにしています」とお父さん。

 
 時には、演奏に関して厳しいお話をされることもあるそうです。
 
 「ただ〝練習しなさい〟と言ってもしないと思うので、なるべく具体的にダメ出しをするようにしています。その内容をすべて受け取れるかどうかはわかりませんが、言う時は容赦なく言うようにしています。子どもにとったら痛いところをつかれるので、反発心も多いのではないかと思いますが、どれだけ怒っても〝やめる〟とは絶対言わないので、最終的に理解してもらえるのでないかと」
 
 それだけ真剣に支えていらっしゃる反面、気持ちをリラックスさせるアイデアをお風呂に施しました。浴室内にスピーカーを設置し、親子で一緒にお湯に浸かりながら、指導曲集のCDを聴くことが多い中島家。「まったりした気分になります。二人目が生まれて何かと慌ただしい毎日ですが、音楽が自然に入ってきます」
 

腕の筋力や敏捷性を鍛えることも、トレーニング

 実は、競技かるたでも、お父様と奏さんはライバル関係。読み手が読み上げる歌のの句を聞いて、瞬時にの句の書かれた札を取りに行く競技ですから、百人一首の歌をすべて覚える記憶力もさることながら、集中力と判断力、運動能力も必要になります。「幼稚園の時に漢字かるた大会があり、いつのまにか北陸大会で優勝し、東京の全国大会でも優勝したことがありました。今は近くのかるた会に行って練習するのがメインですが、いつか〝本気でやりたい〟と子どもが思った時に、家でも相手することができるように自分も練習しています」とのこと。ちなみに現在は、お父さんが初段クラス、奏さんはその下のクラスだそうです。

 
 父と子の関係を、奥様は、どう見ていらっしゃるのでしょうか。
 
 「お互いに良きライバルであり、息子にとっては、自慢の父親だと思います。楽器でも競技かるたでも父親が練習を始めると、負けじと息子も練習を始めることが多いです(二人ともピアノを弾きます)。毎回、練習で叱られて、怒って、泣いて、ふてくされの繰り返しですが、少しずつでも自分の中で言われたことを消化しながら進歩していっているので偉いなと感じています。私の言うことは甘えが先行して素直に聞くことが少ないですが、父親の言うことは反発しつつも最終的には納得して聞くことが多いので、尊敬もあるのかなと感じます」
 
 奥様は、フルートを通して、奏さんが「自分で音楽を奏でることの楽しさから人生の喜びを見つけたり、人と音を作り上げていくことの難しさからコミュニケーション能力を身につけたりして、心の豊かな子に育ってほしい」と願い、お父様も「できないことができるようになっていく、その過程を楽しめる人間になって欲しいし、 楽器は年を重ねても演奏を続けられるものだと思うので、人生の彩りになれば」とエールを送っています。
 
 そのお父さんが最近感心しているのが、奏さんの読譜力。いつの間にか、お父さんより速く読めるくらい成長していたそうです。試しに聴音もテストしてみたら、全問正解。基本の三和音を的確に当てていました。フルートを学ぶ過程で、耳がしっかり育っていたことになります。
 

左から葵さん、奏さん、摺出寺先生

 スズキ・メソードについては、「親が一緒にレッスンを受けることで、親の教育にもなりますね。親ができないことを子にやれやれと言っても、なかなか難しいですし、一緒に勉強していく感じになるのがいいと思います」とお父様。まさにそれを実践されているのが中島家です。奥様も、「毎回親子でレッスンというところが、飽きっぽい子どもが、長く続けられる秘訣ですね。特に我が家の場合は、甘えん坊な息子なので、自分のためだけに親が真剣に見てくれていると感じて嬉しく思っているようです」

 
 お互いを高め合いながら、成長を続けている中島さん親子、外は猛吹雪の銀世界ですが、温かいぬくもりを感じた次第です。

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